2015年2月8日日曜日

Kindleの注釈機能を堪能する

田中康夫さんの「33年後のなんとなく、クリスタル」を読んでいる。
もちろんこれは、田中のデビュー作の「なんとなく、クリスタル」の後日談ともいうべきもので、1980年の33年後の現在を、その後の主人公などを追いかけながら、いま、何を感じ、どう生きているのかを描いたもの。

田中康夫は小学校のときに松本に引っ越し、松本深志を卒業して上京して一浪後、一橋大に入学。卒業間近に停学になって1年留年し、卒業間近に発表した「なんとなく、クリスタル」は、80年のベストセラーとなり、同年4月にモービル石油に入社するものの、3カ月で退社している。
80年といえば、POPEYEが全盛で、ホットドッグ・プレスが創刊して間もなくのころだ。

この田中康夫の最新作「33年後のなんとなく、クリスタル」をKindleで読んでいる。「なんとなく、クリスタル」もこの「33年後のなんとなく、クリスタル」も、本文に脚注をたくさん入れ、風俗や店、ショップなどを存分に解説している。

ちなみに、これらの脚注を多用する方法は、「なんとなく……」以後の「ブリリアントな午後」「たまらなく、アーベイン」「スキップみたい、恋みたい」などには引き継がれていないが、「33年後のなんとなく、クリスタル」で復活した。

小説を読みながら、脚注を読んでいくのは面倒だろう。だが、編集に工夫が施されていて、「なんとなく、クリスタル」では本文下に脚注用のスペースが設けられ、ここに注釈が記載され、本文も脚注も併行して読み進められるようになっていた。この手法は、「33年後のなんとなく、クリスタル」でも引き継がれている。一部の学術書や解説書などでも用いられる手法だが、小説でも有効だといえる。

この注釈は、電子書籍ではどうなのか。実際に「33年後のなんとなく、クリスタル」を読んでみると、注釈の表示方法が、利用するKindleによってかなり変わっていることがわかる。

まず、Kindle Paperwhite(2012年版、2013年版)、それにVoyageでは、注釈の番号をタップすると、画面中央に「脚注」ウィンドウが開き、ここで注釈が表示される。ウィンドウ右上の「x」をタップすれば、注釈ウィンドウが閉じてそのまま本文を読み進められる。

紙本と同じように、本文と注釈を併行して読み進められるようになっている。単語を選択して辞書を表示し、単語の意味を調べるときと同じように、注釈の番号をタップすれば、ページ内にウィンドウが開いてその注釈が読め、ウィンドウを閉じればそのまま本文の続きが読めるわけだ。

ところが、iOS版のKindleアプリ、それにAndroid版のKindleアプリでは、注釈番号をタップすると脚注のみのページに飛ばされる。

元の本文に戻るためには、画面をタップして一番下にあらわれるスライドバーで、[→]をタップする必要がある。あるいは、表示されている注釈ページで、注釈番号のリンクをタップすると、元のページ(タップした注釈のあるページ)に戻る。

手持ちのKindle Fireでも同じだ。そして、新しいKindle for PCでも同じだ。
本の作り方にもよるが、注釈を多用しているような本なら、やはりKindleの専用端末のほうが使いやすいようだ。

 



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